信南交通、路線バス事業から撤退。

昨年末、信州で地方公共交通に関する大きなニュースが続いた。松本電鉄他を擁するアルピコグループの自力再生断念のニュースともう一つ、信南交通の路線バス撤退のニュースだ。かなり旧聞だが。


 信南交通飯田市)の中島一夫社長は28日、信濃毎日新聞の取材に対し、飯田下伊那地方で直営運行している一般路線バス全12路線28系統について、直営方式から撤退する方針を明らかにした。赤字が続き収益の改善も見込めないため、事業として継続できないと判断した。今後、地元市町村と協議して、2010年3月をめどに、全系統の運行主体を行政などに移管したい考えだ。移管後の運行は同社が受託することも視野に入れている。
 直営の一般路線バス28系統は、飯田市下伊那郡高森町、阿南町阿智村、下条村、泰阜村喬木村豊丘村を走る。このほか、飯田市9路線、喬木村2路線など15路線では、自治体が運行主体となり、同社が運行を受託している。同社は直営で運行する路線もこうした方式に切り替えたい考えだ。
 直営からの撤退方針は今月の取締役会で決定。既に一部の関係市町村の担当者に伝えているという。

 同社の07年9月期の売上高は前期比5%増の20億9700万円、経常損益は赤字額が前期の400万円から1700万円へ拡大した。うち路線バス事業は9000万円以上の経常損失を計上し、赤字の主因となっている。
 同社は新宿、長野、大阪などとの間で運行している高速バス路線が好調で、同事業の同期の経常利益は1億9000万円。現在は一般路線の赤字を埋め合わせているが、利用者数の伸びが頭打ちで、今後は不透明な状況だ。
 一般路線への自治体からの補助金も減少傾向が続いており、「地域の少子・高齢化を考えると路線バスは今後、事業として続けていくのが不可能」(中島社長)と判断した。今後は高速バスや旅行事業を軸に収益の改善を図っていく。
 中島社長は「自治体が運行主体になれば、住民の利便性が高まる可能性もある。利用者に迷惑をかけない形で進めたい」と話している。

信南交通は伊那・飯田を中心に路線バスを運行している会社だが、「みすずハイウェイバス」を代表とする高速バスが売上の大部分を占め、「高速バスに救われた路線バス事業者」の代表例といわれている。今でも東京・名古屋・松本から1時間毎に、他にも大阪・横浜から高速バスを運行している。新宿のBTなんかで見るクリームと赤・青のいかにもなカラーリングのバスがそれだ。
信南のバス会社といえばここ信南交通伊那バスが大手で、結構大規模な路線網をもっていたと聞く。ちょっと前まで年代もののセンターアンダーフロアエンジンのバスを大事に使用していたことでも知られ、そのバスは2006年公開の日本映画「フラガール」にも信南カラーで出演している。いい写真のページを見させていただいたので、外部リンクを張っておく。

さて閑話休題、記事にあるとおり補助金をうけても全路線が赤字という状況で、先の展望もないことから路線バス事業からの撤退を決めたということだ。高速バスで埋め合わせをしている、とはいえ、それならばそもそも路線バス事業に意味がないのではないか、という判断になってしまうのは致し方ない、というところなんだろうなあ。


バスは12路線28系統で飯田市、高森町、阿南町豊丘村喬木村阿智村、下条村、泰阜村を走る。全路線が補助金などを含めても赤字で、少子高齢化や過疎化の影響を受け、年々額が増えている。07年9月期の決算で同社の売上高は20億9700万円で、経常損益は1700万円の赤字。路線バス事業は約9千万円の赤字で、経営を圧迫している
この10年で、すっかり地方交通、路線バスは地元自治体が福祉として行うもの、という形が定着してしまったような気がする。昔から長野はモータリゼーションの進展が早かったからか、事業者が寡占状態だったからか、「自治体バス」への移管が早く路線が多いところではあるのだが、今後もこの状況は進んでいくのだろう。中途半端な市街地近郊ではばっさり廃止されてしまい、田舎では自治体バスが一日2〜3回程度平日は回ってくる、そういう風景がどんどん進んでいくんだろうなあ、と思われるのだ。せめて通勤通学時間だけでも走ってくれればいいのだが、自治体バスの中には完全に通院用とかに割り切っていると思われる走り方をするものもあり(隔日運行、とかね)本当に地方交通というのは経済活動として成立しなくなってきたのかなあ、とさびしく思うのだ。
自治体バスがあるからいいじゃないか、という考え方もあるんだろうけれども、多く見られるような1乗車100円、とかで地方の財政を圧迫させていくのがいいかというと・・・ねえ、という気もして。
 実際どんなサービスが必要なのか? というのをきめ細かくキャッチすることは必要だと思うんだが、どうやったらそれが効率よくできるんだろうか。こういう自治体バスって、どれくらいの乗車が実際にあって、本当にフル民間でやろうと思ったらどうしたらいいのか、実際にどうなんだろうかなあ、と考えるのだ。
 こういうバスの来なくなるような田舎、交通手段がない、という問題もさることながら同様に買い物できる「店」も急激に減っているはずだ。田舎の農協、スーパー、いわゆる雑貨屋や食料品店にしろずいぶん減っていて、「移動スーパー」でカバーしているところもあるがそれすら行かなくなったところも多いと聞く。そっちのほうも現状どうなのかなあ、とかふと考えるのだ。