長崎、8月15日(その3)

さて、まだまだ続く長崎の精霊流し。ぶらぶらと商店街で遊んだりしつつ、また戻ってきた。遠くではぱらぱらと爆竹の音が聞こえる。まだ道端に置かれたままの精霊船も多いが、だんだん集合場所に集まってくる時間だろうか。

精霊船は、その年になくなった故人の霊を載せ、家から中心市街地の集合場所に、そしてゆっくりと船着場へ道を流れていく。魔よけともお祓いともいわれる爆竹の音を響かせて。長崎の爆竹消費量は日本一、そしてその大半がこのお盆期間中、その中でもこの日の夕方に消費されるという。

よく見るのが、精霊船の後ろに1m角くらいの立方体の台車が何台か牽引されている様子。「飲み物」とかかれた台車の後ろに続くのは「花火」と書かれた台車。台車の中に爆竹がぎっしり、ってもう想像がつかない。

ただこの時間はまだ静かなものだ。亡くなった人との最後の時間を慈しむ様に、ゆっくりと精霊船は進む。道端を遺影が、喪服姿の方々が続いていく様子も珍しくはなくなったが、まだなんだろう、心が痛む。


精霊船は個人で出す個人船、自治会で出すもやい船、などがあり形も様々だ。会社で偲ぶもの、個人で偲ぶもの。

そして、人だけではないようで、こちらはペット霊園の精霊船。船、というよりも蛇踊りなんだけれども。


初盆でない方は、こもに小さなお供えを入れて流す(実際に「流す」訳ではないのだが)という。様々な想いが街を進んでいく。

やがて繁華街のメインストリートに交通規制が引かれ、精霊流しが始まった。華やかに、騒々しく。


さっき商店街で山積みになっていた耳栓はすっかり売り切れてしまったようだ。両側には観光客と観客の姿、その前を大量の爆竹を鳴らしながら船が進む。進む、といっても時速にすると1キロに満たないほどの低速だ。足元で爆竹がはぜ、耳が痛い。そんな中、そこここで観客と船についた方とで挨拶が交わされる。「ほんに元気だったこつねえ・・・」ふと聞こえた。亡くなった方は、確かにここにいるのかもしれない。


一本奥の思案橋で。いつもの通りの町並みが広がっていた。