オトンとオカンと東京タワー

オカンが東京にいたときには、東京タワーはまだなかったという。親父がいたときには、東京タワーは工事中だったという。移転する前の職場の窓からは、東京タワーがすぐそこに見え、そして東京タワーの第一展望台からは職場の窓際の席が全部きれいに見えていた。時代は変わりながら、東京タワーはそこにある。三者の記憶をつなぐものとして。


初めて東京タワーに上ってみた。フロアは内装が改装されているようだが、大食堂や旧式のエレベーターが昔ながらだ。大展望台から別途料金で上部展望台へ、まるでエキスポタワーの展望台のような殺風景な、昭和40年代そのままの展望台からは富士山こそ霞んで見えないまでも、東京の街がどこまでも広がっているのが見える。超高層ビルでそこここ隠されてはいるけれども。こういう風景をみてどう思っているんだろうか。子の俺にはわからない世界がそこにはあるんだろう、多分親父なんかかなり意識は混濁しているはずなんだが、見ているのか見ていないのかただじっとしている。東京湾がきらきらと光り、モノレールがゆっくりと走っていった。