金町線ぶらり

相変わらずなんだか平日は忙しいわけですが、ふと時間が空いた土曜日.夕方からはまた所要なので、数時間のうちでどこかに行きたいなあ、とか考えていたのですが、なんとなく以前から路線図を見て気になっていたあたりをぶらりと.
土曜日で人気の少ない大手町からビックカメラだけえらい混んでいる日比谷を経、昼下がりで空席の多い半蔵門線東武線に
乗り入れて曳舟へ.曳舟なんて、まず来る用事なんてないだろうなあ、とどこからかパチンコ屋の音楽が流れてくるばかりの駅前を見ながら考えます.駅構内もうどんやでおばあちゃん同士が話し込んでいたり、まったりとした雰囲気.

こんな路線、といっても東京在住の一部にしかなじみのなさそうな路線がこの亀戸線、本線から分岐してひょろっと南下、総武線の亀戸という各駅停車しか止まらない駅で終点、中間駅が3駅だけのしごくちいさな路線です.


で、起点だか終点だかの曳舟駅の端っこ、5番ホームが亀戸線専用です.3両分くらいしか有効長のなさそうな短いホーム.

やってきたのは2両編成の短い8000系.10分おきに電車が出ているにもかかわらず、30人くらいの人が降りて来ました.前後が替わって、3分ほどですぐ折り返しの亀戸行きとして発車します.慌しく発車しますが、昼過ぎなのに20人弱ほどの乗客がいてちょっとびっくりです.支線とはいえやはり東京の鉄道なんですね.がたがた、とポイントを踏んで高架から地上に降りたかと思うと線路は複線に、家々が立ち並ぶ中を淡々と走って行きます.なんとなく南海汐見橋支線に似ている感じですが、完全に時代に取り残されたような汐見橋線に比べて、立ち並ぶ家々も新旧入り乱れ、町がまだ生きているという気がするのです。次々と踏切を越え、小村井駅へ.3.4キロに過ぎないこの亀戸線ですが、ここ小村井まで曳舟から1.5キロくらいあるんですよね.途中に駅を作らないのは何でなんでしょうかねえ.需要がないとも思えないのですが.

そんな感じであとは本当にがたがたと、またゆっくりと走ってもあっという間に終点、亀戸に到着したのでした.亀戸の駅がまた、JRの駅の土手の下、駅ビルの向こうにひっそりと1面2線の頭端式のホームがたたずんでいるんですね.道理で何度も総武線に乗っても車窓からは分からなかった訳です.


さて、エルナードから改称され、客層の若返ったような気のするアトレ亀戸を抜けて、歩いて戻ります.駅から一歩はいると、タバコ屋があって、小さな商店街があって、銭湯があってコインランドリーがあり、昔ながらの東京の風景が広がっていました.いや勿論そんな風景に俺はなじみはないわけですが、それでもああ、こういう風な風景が下町の原風景でもあるんだろうなあ、そんな風景なのです.

亀戸水神の駅の前、丸八通りに面しているのですが、こんな小さな駄菓子屋が.マンションと古い家、そして紙を中心とした中小工場と渾然一体とした町並みを作っています.防潮扉を持つ小さな運河を過ぎ、電車はことこと走ります.途中「東武電車遭難者の霊」と刻まれた小さな石碑を望みますが、東京大空襲によるものでしょうか.中間駅のいくつかを焼失しています.そんな歴史を抱えつつ、何もみるところがない、それがまたこの亀戸線の特長のような気がします.