電車の来ない、その街へ

先月末で廃止されてしまった西鉄宮地岳線の新宮〜津屋崎間.同日付で廃止された首都圏近郊の鹿島鉄道などと比べて、鉄道マニアがそんなに大挙して押しかけることもなく、地元でもそんなに話題になることもなくひっそりと廃止されていったように聞いています.沿線は住宅開発が進んでいるんですが、併走するJRと自動車交通に太刀打ちできず・・・というのはなんか寂しい終わり方で、いろんな想いがあったのですが廃止後2週間たってちょっと寄ってきました.寄ってきた、といっても、残った宮地岳線改め貝塚線は最寄の鉄道なんですけれどもね.

 一部区間が廃止になると同時に、随分本数が減りました.日中12.5分ヘッド(その昔は13分だったのですが)という中途半端なヘッドは15分ヘッド、と分かりやすくなったのですが、朝夕に走っていた三苫止が廃止になって、ちょっとヘッドがその部分だけ詰まったのですが、ざっと2/3くらいの本数になったようなイメージです.不便になったなあ、とは親の話.まあバスは1時間に1本になってしまったのでそれよりはずっと便利なんですけれどもね.やってきたのは313型(1952年製)、朝乗ったのはそういえば600型のトップナンバー(1962年製)だったから、年代物の電車がごろごろしている状況はあんまり変わっていません.さすがに釣掛駆動車は淘汰されたみたいですが、あいかわらず頼りなげなコンプレッサーの音をたてて駅に止まっておりました.大部分のお客さんが降りてしまい、がらがらの電車はガタン、ガタンと大きな音を立てながら疾走して新宮駅に向います.

すっかり葉桜になったが桜の木が今年も出迎えてくれた西鉄新宮駅.いつもどおり、改札口の横には「祝ご入学 新宮高等学校」と達筆の看板、桜紙で作った花に飾られた看板が今年も置かれていました.ただ、もうこの先には電車は行くことはありません.ホームの先には新しい車止めが作られ、線路が断ち切られていました.その先にはこれまでなかった位置を道路が横断し、その先は砂利で埋められて、まだ上屋が建築中のバス停が置かれています.横にはまるで仮設の、木の柵で作られた送迎者用のロータリーがあるんですがおそらく使っている人なんていなさそうな感じです.路上駐車しても、そもそも車が走っていないんですから.そしてその広場の向こうではまた線路が復活して、遠く遠く松林の中に消えていってるのでした.駅前には高校生相手のたこ焼き屋と雑貨店のようなものが一店きり、なにもない、あまりになにもない終着駅です.まあ津屋崎も何もない駅だったんですけれども.