営業黒字、を出すには。

連日JR西日本は「利益第一主義」とやたらと非難され、ネット上ではそれに対する意見などいろんな意見が飛び交っているのですが、その隅の方でひっそりとこんなニュースが流れていました.


 JR九州(福岡市)が十日発表した二〇〇五年三月期連結決算は、三期連続の増収増益となり、いずれも過去最高を記録した。単体では、一九八七年の民営化以来初の営業黒字を達成した。

●脱線防止へ安全投資も
 昨年三月に部分開業した九州新幹線が鉄道収入を後押しする一方、人件費を抑制したためで、黒字化は北海道、四国、九州の「JR三島会社」で初。〇六年度を目標とする株式上場について、石原進社長は「実現に一歩近づいた」と話す。
 JR西日本の尼崎脱線事故を受け国が義務付ける安全対策では、列車自動停止装置(ATS)の改良費などで今後四億円が必要になる。石原社長は「経営全体に影響する額ではない」とし、上場に向けた今後の営業黒字の拡大に影響しないとの見通しを示した。
 同社によると、営業黒字は当初二億円を見込んでいたが、四億六千三百万円となった。九州新幹線の運輸収入は百十六億円で、鉄道収入全体を前年度比7・5%押し上げた。人件費は採用抑制で二十九億円を節減した。
 連結では、対象の四十八社のうち、赤字会社が六社と前年度より二社減った。次期は売上高二千五百七十億円、経常利益百二十八億円、純利益六十五億円を見込む。

発足より20年くらいかかって、ようやく営業黒字を達成したJR九州、3島会社(九州・四国・北海道)の厳しさは本島3社とは全く違うものがあります.設備なんかちょっとローカル線にまで行けば国鉄時代そのままがまだ色濃く残っているし、車両も格差が激しい(まあ西日本もその傾向はありますけどね)様な感じがします.労働環境も・・・どうかなあ、よくわかりませんけど「鉄道業」自体が縮小傾向、その分色々な意味で労働強化になってるんじゃないかなあとは思いますよね、やっぱり.
しかもこのようやく達成した黒字も、九州新幹線の開業フィーバーという後押しがあってこそ、高くても割引きっぷが使えなくても、しかも部分開業に過ぎなくても、お祭というのは偉大なもので、高速バスなどが追撃体制を強めてくるであろう来年以降も同じ状況が続くとはちょっと考えられません.

いや、もちろんJR九州の努力ってのはすばらしいと思います.積極的に関連事業に打って出ていますが、福岡の街を歩いているとスーパー銭湯からマンションまで関連会社にはよく出会いますし、鉄道事業だけみれば、少なくとも福岡・北九州都市圏は便利になりました.子供の頃なんて鹿児島本線でさえ日中一時間も列車が来ないことがありましたが、今や特急から貨物列車まで数分おきに列車が来る密集区間になっています.しかし、やっぱり大丈夫かなあとか思ってしまうわけです.九州も西日本のように、ごくごく一部の路線に列車を集中させて他の区間の赤字をまかなわざるを得ない(大手私鉄のように鉄道事業以外で収益を出せるようになればまた変ってくるんでしょうけど)というのは確かな訳ですから.
さて、上の記事によると「安全対策に4億円」なんだそうです.おそらく福岡・北九州都市圏の高密度運転をしている区間でしょう.
ATSといっても色々あるわけですから国の基準に定められるであろう改造に必要な費用がいくらか、ってのはまだ一概には言えないとは思うんですが、確か九州のATS-SKでしたっけ、は比較的改造費用が少なくて済むってことでしょうかねえ.うーん.

もう散々いろんなところで言われ、擁護され、叩かれてきたことですが、利益と安全はもちろん相容れない概念じゃありません.しかし、本当にできるのか、どの辺まで資金補助などがなされるのか、その辺が問題になる様な気がします.

神戸新聞にはその辺の話が.


国交省は旧型のATSを改良するか、新型への切り替えを求めており、今月中に詳細な基準を公表、六月までに各社に整備計画を提出させる。
 関西の阪急、阪神、山陽、能勢の各社は、区間ごとに適切な速度を電車に伝え、速度超過を修正する「高周波連続誘導階段制御方式」を整備。新幹線などのATCに近いシステムとされる。阪神や山陽は「現行のシステムの方が安全性は高いのだが…」と戸惑いを隠せない。
(中略)
 一方、三木鉄道は駅間が平均約五百メートルと短く、電車の速度は最高で六十五キロ。「カーブも少ないのに、設置を求められるのか」と首をかしげる
結局交通インフラとしての鉄道にどこまで力を注ぐのかということになるんでしょうね.