さよなら、さよなら

ちょうど夕方、外回りの途中吉塚駅にて。

ちょうど電車を待っていて、415系の普通電車、肥前山口行きが博多方面に走り去ると、ぴょっと短いホイッスルが聞こえてきて、この列車が走り去ってゆく。去年福岡に転職でやってきて、この時間に外回りが多くなってきてこの時間に駅に居ることが結構あるので、なんとなく見慣れた風景だ。子供の頃から、この夕方の時間は東京行きのブルートレインが次々と東に上っていく、というイメージがあるので、日常に溶け込んだ風景といった感じなんだけれども。
 そんなブルートレインだが、報道の通り今年の春で九州、というか大阪より西では姿を消してしまう。そういえば子供の頃から見慣れた車両だ、そりゃ年も取るわけだ。それに就職してよくわかったが、こんな時間に東京行きの列車に乗るなんて難しいよ・・・働け、ってもんだよ。すっかり車体の側板も波打ち古びてしまって、短くなってしまったブルートレインはそれでもホイッスルを響かせながら堂々と東京へ向かっていったんだけれども。

 ブルートレインといえば、うちの親父の世代だ。うちの親父がたまに東京に出張に行って、お土産にくれるのはまだタグ式だった航空券かN型マルスの横長でカタカナ表記の「寝台券・特急券」(ここは漢字タイプ印刷)だった。まあたしかに、仕事を1時間ほど早く切り上げれば東京に出立でき、翌日は午前遅くの会議とかであったら間に合い、しかも航空機よりも安いとなれば出張経路として妥当なものだったのだろう。俺らの世代にとっては、本当に特別なもので、もちろん乗ったことなんてなかったんだけれども。しかし、いまや航空機のほうがコストが安い時代だ。ブルートレインの命運はもう決まっていたんだろうなあ。そう考えると、お疲れ様。

しかし、もうちょっとがんばれる要素がなかったわけではないと思うんだけれどもね、というかがんばってほしかったと思わなくもない。

あんまり派手に宣伝されていなかったが、ひそかに東京往復の割引切符というのはずいぶん長い間発売されていた。このきっぷ、たとえば往復寝台だと博多〜東京で往復31,640円。28日前とかそういう長い事前予約を除けば、スカイマークでの東京往復とほとんど変わらない。高速夜行バスでの往復でも27,000円と、まあかなり健闘していたんじゃないだろうか*1。格安航空会社が就航していない熊本などからだと東京まで一番安い往復の交通機関だと言い切ってもいいくらいだ。(ツアーバスとか青春18きっぷとかそういうのを除いて)
でも、このきっぷ、東日本は早々に発売を廃止してしまったと記憶している。九州にとって東京は特別なところなんだけれども、東京にとって九州は地方のひとつに過ぎず、わざわざ往復切符を設定するに足らなかったのかなあ、とかえすがえすも残念な話。

*1:はかた号も乗車率がいいとはいえないが