終日船の上

20時過ぎにはもう寝てしまったので、夜中に何度となく目が覚めた。もう朝かな、と思って目覚めたらまだ24時過ぎだったところから始まって2時、3時とほぼ一時間おきに目が覚める。寝ては起き起きては寝、何度となく繰り返しているうちにようやく空が白み始めた。どうも曇り空らしく残念ながら日の出は見ることはできなかった。


この「おーしゃんのーす」には24時間入浴できる展望風呂がついている。展望風呂、といっても温泉施設のようなそれではなく、10人ほどが入れる風呂にいくつか窓がついていて、外甲板を通して海が見えるだけなのだが一面の大海原、当然ながら何もない。船のゆれはほとんど感じないのだが、うまい具合に周期が合うのか何分かおきに大きく右に左に風呂の水面が揺れ、端からあふれてゆく。ぼんやりとゆれる風呂に入りながら外を眺めていると、外界から完全に遮断されているような感じがしてくる。まあある意味その通りだ。ちょうど三重県の沖合ぐらいだろうか、携帯電話はもちろん通じはしない。

昨日本を買い込んできたものの、なんだい、丸一日読もうと思っていた「カラマーゾフの兄弟」、中巻を買わずに下巻を買っているではないか。正直上下巻だと思っていたのだ。ということでまた寝る。寝ていないときはひたすら酒を飲む。なんだかなあ。

9時過ぎに潮岬沖合を通過、だんだん周囲に船が、遠くに陸地も見え始めた。観光ホテルのようなものが見えたあたりが和歌山だろうか、やがて大阪にも近い徳島に昼過ぎに入港。


ぼんやりと入港風景を眺めて2時間あまり、再び船は出港する。波の荒い日は瀬戸内海の第二基準航路を通る日があるというが今日はほとんどゆれを感じないほど、再び太平洋に船は向かう。やがて今日も夕方がやってきた。17時過ぎ、室戸岬沖を通過、長く短い、ただただ何もない一日が終わった。