どう評価するのか


 国の登録有形文化財、旧国鉄志免炭鉱跡の立て坑櫓(やぐら)(福岡県志免町)について、長崎大の後藤恵之輔教授(土木工学)が社会的価値を年間3300万‐4400万円とする調査結果をまとめた。後藤教授は「町民アンケートに基づき算出しており、保存に向けて税金を使う場合の根拠となるはず」と話している。
 文化遺産を金額で表す「仮想評価法」という手法を用いた。後藤教授は長崎市端島(通称・軍艦島)などでも行った実績がある。今回は昨年11月から12月にかけて、電話帳から無作為抽出した志免町内の1000世帯にアンケート用紙を郵送し、214世帯(21・4%)から回答を得た。
 立て坑櫓を存続させるために「税金の中から支払ってもよい」と答えた割合は76・2%。いくらまで税金で負担できるかを尋ねたところ、平均的な金額は一世帯当たり年間2681円だった。これに町内全世帯(1万6568世帯)を掛けると約4400万円。
 この総額から「税金からは支払いたくない」という世帯の割合を差し引くと、約3300万円となった。志免町出身の後藤教授は「2000円以上負担してもよいと答えた割合が予想以上に高かった。立て坑櫓は世界的にも貴重な財産だと考えている」と話している。

 旧志免炭鉱の立て坑櫓は1943‐64年、石炭採掘に使われた建造物で、高さ47・65メートル。ワインディングタワー(巻き上げ)式の立て坑櫓としては、国内で唯一現存している。
 志免町は、石炭産業の歴史をしのばせる町のシンボルとして位置付けているが、議会で解体を主張する意見もあり、現在は費用をかけない「見守り保存」としている。

俺なんかは単純なので、「今はそんなに重要視されてないかもしれないけれど、町の記憶をとどめるアーカイブとして残しておけばなにかしら評価されるときがあるんじゃね?とかどうしても思ってしまうわけだが、その反面財務屋としては経済的合理性とは、というのが思考の最初に来てしまう。仮想評価法も、環境問題などでは使われているのは知っていたが、文化遺産を評価する、という意味合いでも使用されていたとは知らなかった。保存した場合としない場合の変化をどういう風に提示しているのか、もしくはなにも提示せず想像に任せているのかがとても気になるところだが、総意として正しいということだろう。
石炭、炭鉱地帯といえば筑豊だが、筑前でも炭鉱は多く立地していた。福岡市内の西区、姪浜にも確かあったはずだし、志免なんていまや完全に福岡都市圏だ。そういうところの失われつつあるルーツを残していく、それをどう住民に理解を求めつつ資源として使用していくのか、ってのが行政に課せられた役割なのかなあ、とか思うわけだ。もちろんこの考え方は行政だけではなくて、小売だったら出店退店時に回りに与える影響、単純な損益資金以上の影響をどう計算するのか、というのに使えそうな気がするし、そういう視点がこれから大事になってくるのではないかろ思量するところだ。
はからずとも、来年から行政で働くことになったわけだが、そういう意味では今の判断軸と違う軸も必要な訳で、はたして勤まるんだろうか。