景色は一級品だったんだけれども


島原鉄道島原市)が30日、10年半続けてきた観光トロッコ列車の定期運行を終了した。島原駅でセレモニーがあり、約40人が乗った午後1時25分発の最終便を見送った。
 観光トロッコ列車は、雲仙・普賢岳噴火災害で不通になった島原‐深江間の全線開通を記念して、1997年4月1日から同区間で毎年定期運行を続け、今年10月に乗客30万人を達成した。来年3月末で島原外港加津佐間が廃線になるため、それまでは予約を受けて臨時運行することはあるが、その後姿を消す。
 定期運行終了のセレモニーで、列車内で「語り部」として噴火災害を語り伝えてきた大川三郎さん(76)と近津春樹さん(69)の2人に花束が贈られ、塩塚吉朗社長は「観光島原の目玉としての役割を果たしてくれたと思う」とあいさつした。
島原半島諫早から北から時計回りに半周ちょっとし加津佐にいたる鉄道が島原鉄道。東京から遠いからか比較的メディアに露出することは少ないけれども、全長78キロ、所要時間2時間半、運賃2,060円*1、海岸線に沿って集落をつなぎながら、たまに海を眺めながらゆっくりと走る鉄道。これといった特徴はないけれどもそれが特徴といえば特徴で、ぱらぱらと集落が点在する人口が希薄な地帯をゆっくりと走る長閑な鉄道だ。最後に行ったのは福岡に住んでいた数年前だが、当時でも小さなプレハブの駅舎に嘱託か委託と思われるおばちゃんがいて、駅名記入式の硬券乗車券とかを売っていた。なんだかひっそりと時が止まったような南国らしい鉄道だった。
 乗客は勿論通学の高校生が中心だが結構健闘していて、昭和末期から平成にかけて徹底した経費削減で(乾いた雑巾をまだ絞るように、とは当時からよく評されていた)貨物廃止後にあっても鉄道事業で黒字になっていたり*2、優等生と言われていたかと。
 そんな鉄道の南半分が来年3月に廃止される。先立って、トロッコ列車の定期運行が終了したというニュース。

トロッコ列車には結局乗らなかったが、島原鉄道は本当に軒先や集落を掠めたり一面の干拓地を疾走したり、また細くなった国道と絡み合いながらしみじみ走ったりと、乗って楽しく見て楽しい鉄道だ。こんなページも見てて楽しい。ああ、いつだったか撮影に行ったときにこの人形、役場の駐車場に鎮座ましましているのをみたや。

廃止区間にはたとえば島原の乱原城があったりするのだが、余り観光地開発もされておらず「田舎の鉄道」のままで廃止になることになってしまった。日本全国どこもそうだが、やはり自動車交通には単純な移動の便利さでは勝てない訳で、既存のフレームの中ではむしろよく持った法になるのだろうか。
 ただ、個人的には惜しいなあ、と思うのだ。観光地へはたしかに観光バスのほうが便利かもしれない。島原・雲仙は少なくとも九州でのネームバリューは高いわけで、福岡からの送迎バスは結構な人気だと聞く。送迎バスではなく、例えば既存の鉄道でなにか・・・とか沿線にある複数の自治体を取り込んでいけるような形になったらよかったのかなあ、とも思うのだ。本当は、貨物輸送とか鉄道のスケールメリットを出せるなにか、というのがあればいいのだけれども。

*1:意外と安いような気がする

*2:普通の企業ではそれが当然だが、そう考えると地方鉄道はもう一般に収益事業として存在できていなかったということか、と改めて考えてみたり