黄昏の駅にて

掘っ立て小屋のような小さな駅だった大宝の駅も、きれいな待合室に建替えられていました.しかし雨上がりの空気はどこまでもしっとりと、さらにいくつか進んで降りた駅は黄昏の駅.


駅前を出るとなぜか理容店ばかり3件固まった商店と、もう営業時間が終わったのかバイクが店内に入れられたよろずやが一件.近くは梨の名産地らしく、背の低い梨畑が続きます.どこからか聞こえてくるのは夕方のチャイム.

木造の駅舎は湿気を含み、そういえば九州にもこんな駅あったなあとか想いが募ります.ほとんど字の薄くなった駅名表、初めて見るような英字フォントと今と少し違う表記が時代をさかのぼらせてゆきます.30分、1時間.だんだん日も西に傾いたころ、法事でしょうか、ご老人の一団が駅にいらっしゃいました.そうそう、この駅は変わんないねえ.大正時代からの駅だもんねえ、そういえばあの家の人は・・・なんとなく会話が聞こえてきました.



18時40分の列車で帰路に、かえる間際に蛍光灯の青白い明かりがともりました.空はだんだんと青みを増し、駅が闇との間に浮かんでいます.やがてやってきたのは単行の気動車、10人ほどを乗せた列車は守谷駅直通でうとうとと1時間ほどで到着、ここからは30分ほどで大江戸線への乗り換え、新御徒町です.
全線に渡って平坦な地形を走る常総線、自動車交通が普及しているだけに乗客はたしかに減少傾向にあります.つくばエクスプレスの開業が、収益の大部分を依存していた関東鉄道にとって痛手となっており、これ以上の対策を迫られているのは確かです.変わってゆくものに取り残されたように騰波ノ江の駅は浮かんでいたかのようです.