高千穂鉄道、廃線へ


 台風14号で壊滅的な被害を受け運休が続く宮崎県高千穂町の第3セクター・高千穂鉄道(社長=黒木睦郎・高千穂町長)は9日、取締役会を開き、高千穂〜延岡駅(同県延岡市)間約50キロの全線復旧の断念を、全会一致で決めた。観光客の利用が多い高千穂〜槙峰駅(同県日之影町)間約20キロを部分運行するか、全線廃止するか、20日に開く次回の取締役会で結論を出すことにした。
高千穂鉄道は宮崎県は延岡市高千穂町を結ぶ全線約50キロの鉄道です.旧国鉄高千穂線で、延岡から九州山地を横切って阿蘇の南を通って豊肥本線立野にいたる計画だったはず、北と南から建設が進み、北は立野から高森まで高森線として開通、南から開通したのがこの線になります.しかし高森と高千穂は結ばれること無く、沿線の足として維持されていたのですが、昨年の台風で橋梁がことごとく流出し、そのまま運休していたものです.高千穂まで開業したのが1972年ですから、30年余りでその姿を消すことになってしまうんですね.おそらく一部だけで存続、といっても観光鉄道として高千穂橋梁のあたりのごく一部ということになるのかなあ.あまりに複数の地方自治体の出資によって成り立っている第三セクターには24億の復旧費用は巨額に見えます.

たしかに、当時は陸の孤島であったかもしれない高千穂町ですが、今の田舎の例に漏れず高規格の国道で結ばれています.鉄道は川に沿って小さな集落をなんとか繋ぐように走っていくのですが、国道は橋とトンネルで飛ぶように結んでいます.しかも昔から集落は山の中腹やらに点在していて別に駅の前に集落があるわけでもないので、もともと利用者はあまり無かったといいますし、国道を通ったほうが所要時間もずっと短いのも事実、通学と多くはない観光需要だけでは鉄道という大量輸送インフラを必要としないのが現実なんですね.
10年位前までは「鉄道が無くなると陸の孤島になる」という議論も多くありましたが、日本全国鉄道の無いところも多くあるわけで、時刻表上に自分のところの地名がでるかどうか、という問題に過ぎない、ということで、なかなかこのような話も聞かなくなりました.もう地方鉄道って都市圏以外で存続することは出来ないのかなあ、と思うとマニアの俺としては陰鬱とした気持ちになってしまうんですけどね.
しかし、鉄道という巨大なインフラも、人的輸送だけだと仕方ないのかもしれません.物流に生かすことが出来ればいいんでしょうが、今の日本の現状ではご覧の通り.そもそも物流拠点はどんどん郊外のロードサイトに立地し、消費市場ですら・・・ねえ.もったいないと思いつつも仕方ないんでしょうかねえ.

実はこう書きつつも実は乗ったこと無いんですよね.沿線を単車で走っただけなんですが.
川の両岸にはか細い旧国道と鉄道.駅前にはほんの数件の人家と、山の上の集落に続くか細い道.本線が国道に移ってしまったので一日わずか数本もバスの来ない小さなバス停.鉄道がいってしまうと川の音だけがあたりに滔々と響き、人気すらもなくただ霧雨が立ち込める静かな夕暮れ.こうあってほしい、とおもう光景がそこにあったのかもしれません.敗戦になる、というのは本当に残念です.