秋の駅はさびしかりけり

ずっと東に向かう。


立派な駅だが・・・
山を越えて出たのは山田線の上米内駅。盛岡から3つ目、ちょっと見上げると新興住宅地も広がってコンビニなんかもあるんだが、駅周辺は見事に時代に取り残されている。まあ山田線も此処までは区間列車もありそこそこ利用者もあるようだが(自転車置き場に20台くらい自転車があったので)、窓口の営業は14時過ぎに終わり、駅舎ごと施錠されるという駅。

さらに東へ。
普通車一台ぎりぎりの道を延々と走り続ける。道路の半分は落ち葉で覆われ、秋の木漏れ日がちらちら漏れる。
やがてついたのが。


駅前の道はこんな感じ
大志田駅。元スイッチバックの側線が。
一日3本の時刻表。
駅前から。
一部には秘境駅として有名な大志田駅。停車列車は一日3本と極小で、友人(id:nomade)談によると夜になるととにかく星がきれいすぎるくらいの漆黒の闇が広がるところ・・・らしい。車で来るのは正直反則だと思うんだが・・・
隣の駅の浅岸もなんだかわけのわかんないところにある秘境駅だ。去年やっぱり行ったけどな。とりあえずどっちも国道からやたらと遠い。そして大志田から先の道、道路地図では県道になっているんだが・・・すごいダートで入り口には巨大なゲートがある、なんなんだここは。

さて、こんな大志田駅は結構有名なようで、いろんなサイトに出て来る。ただ、秘境駅ではあるが人がすんでないわけではない。駅前には確かに廃屋が目立つが、紫煙が上がっている家もあり、なんか白菜を刈り取りしているばあちゃんの姿もあった。


■ 浅岸字大志田のJR大志田駅付近の停電は復旧しました。(東北電力) (8月31日 12時39分)
(中略)
■ 浅岸字大志田、JR大志田駅前付近の37世帯で停電。現在復旧作業中(東北電力) (8月31日 11時47分)
駅前、ってどこ?どこまで含めると37世帯になるの?という話もあるが、一面寒々とした山肌しか見えない、林道しかないこんなところにもぽつぽつと人がおり、生活が営まれている。郵便物だって宅急便だって届く、不思議な光景だ。
ただし、こんな北上山地の山奥でも以前はもっと人がいて、活気のある集落だったらしい。もちろんスイッチバック駅という特性がそうさせたのかも知れず、「猿でも乗せる気か」と揶揄されるほど基本的に人口希薄地帯であるというのは変わらないが。
こんな、昔の写真入のページを見つけた。

山田線は、盛岡から一気に北上高地の稜線に這い上がる。蒸気機関車時代はC58型が重連で急勾配を登っていたのだが、1970年10月に無煙化され、ぼくが訪れたときには、貨物列車をDE10型ディーゼル機関車が引いていた。現在は国道106号を走る急行バスに客を奪われているが、このときの山田線には、活気があった。大志田でも、次のスイッチバック駅・浅岸でも、何人もの客が乗り降りしていた。
車社会になり、人の移動距離は長くなったんだが、その分人は密集して住むようになった、つうのも考えてみると不思議だなあ、と。

夕方、また上米内に帰ってくると、駅舎は既に施錠されていた。夕方の列車が走り去ってゆく。使用されている一本だけのホームにも、駅舎の軒先にしか照明は点っていなかった。