丸井今井、民事再生法

地場百貨店が好きだ。普段百貨店なんていきやしないのに、なんとなく地場の百貨店には足を踏み入れたくなる。日常感あふれる食料品売り場、高齢者向けに特化したような衣料品コーナー、それでも値段は若干百貨店プライスで、商品に漂う安心感、そんなものがなんとなく好き。福岡だと玉屋、井筒屋、岩田屋、そして松屋。多くはメガ百貨店の系列に取り込まれつつあるけれども、それでも残る屋号が頼もしい。なかには山口のちまきやのように屋号がなくなってしまったところもあるけれども。
さて、そんな北海道。Wikipediaなどでちょっと見た限りでは藤丸(帯広)、丸井今井(札幌)、棒ニ森屋(函館)・・・かな。棒ニ森屋はダイエーグループで、現在は中合の経営だけれども、実質的には地場百貨店だろう。そんな丸井今井民事再生というニュース。


景気の後退により、過年度の過剰な設備投資と関連会社の債務保証が重荷となって、17年1月期には256億円の実質債務超過に陥り、経営悪化が表面化。このため、同年6月に北海道マザーランド・キャピタルを主軸とする第三者割当増資が行われ、(株)伊勢丹との業務提携や分社型新設分割による会社分割方針を発表。同年9月に臨時株主総会で再生計画の承認を受け、旧会社・北海道丸井今井(株)が室蘭店と釧路店及び不採算の関連会社を継承したことで、残る札幌本店・函館店・旭川店と(株)北海道百科・(株)丸井ソフトサービスを継承した。
 17年11月より再生計画をスタートし、18年6月には伊勢丹の出資を受け、同社主導の経営再建が進められていた。
 しかし、景気低迷と大通地区への客入りが落ち込み、再建計画は2期連続で未達成となり、主力となる婦人服売場の店舗改修の実施、紳士・食品部門の強化、更には20年4月よりアンテナショップ「北海道どさんこプラザ」(東京都千代田区有楽町)の運営を受託するなど売上維持に努めていた。だが、6ヶ月決算となった20年7月期(変則決算)には年商368億8179万円と対前年比では93.6%に止まった。損益面も経常損失8億600万円、改装に伴う特別損失3億円を計上し、最終的に9億5500万円の赤字計上を余儀なくされるなど、業績低迷に歯止めが掛からず、20年12月末時点で5億5200万円の債務超過に陥り、再建計画案の見直しを迫られていた。
この記事以前にも、1997年のメインバンク(拓銀)破綻以降バブル後の経営難が表面化、創業家の解任、整理回収機構からの債権放棄などがあって、もう本当ならば10年も前に倒産して今頃伊勢丹札幌店になっていた筈・・・かもしれなんだけれどもね。ということで、実際には3度目の倒産、ともいえなくはないんだが、これで正式に引導を渡されたということになる。
ともあれ、一回整理というのは実際には不可欠だったということだろう。地域になじみの、地域の顔、それは大事だけれども、日々の商売はそれだけではやっていけない。

経営再建中の道内最大手百貨店・丸井今井(札幌)は二十九日午後、民事再生法の適用を札幌地裁に申請し手続き開始決定を受けた。昨年十二月末現在の負債総額は約五百二億円。同社は資本・業務提携している大手百貨店の伊勢丹にスポンサー支援を要請。伊勢丹(東京)を傘下に持つ三越伊勢丹ホールディングス(同)は「至急検討に入る」と発表した。  丸井今井は札幌本店と旭川、函館、室蘭の道内四店舗の営業を当面継続するとしているが、地方店舗については「存続や事業譲渡、閉店も含めて検討する」とするほか、正社員や契約社員、パートなど千五百人余りいる従業員の削減も視野に入れて再生計画をまとめる。
 丸井今井によると、二〇〇五年から伊勢丹の支援を受けるなどで経営再建を進めていたが、札幌駅前地区の商業施設との競争激化に加えて、昨年秋からの経済危機を受けて昨年十一月以降の売上高が前年同期比15%も減少し、急激に資金繰りが悪化。昨年末現在で五億五千二百万円の債務超過に陥るなど、自主再建を断念せざるを得なくなった。
 債権者は主取引行の北海道銀行など金融機関二十一行で合計約二百九十二億円。このほか取引先は約二千百社、百二十六億円など。金融機関や企業再生ファンドなどの所有する株式についても100%減資が避けられないとの見通しを示した。 (略)
さて、そんな倒産関係の記事だが、日経MJがもうちょっと面白い。不謹慎だけれども。

「月末の決裁に30億円も足りないじゃないか」。初売り商戦直後の1月上旬、札幌市中心部にある本社3階の役員室で衝撃的な営業報告を受けた畑中幸一社長は、頭を抱えた。それまで商品の仕入れ代の支払は、毎月末に借入金で補いながらも何とか乗り切ってきた。
だが、2008年末の「リーマンショック」で消費不振が深刻化し、書き入れ時の年末年始の売上高は二ケタ減と惨敗。もはや二月分の売上金では返済しきれない。「民事再生法の適用申請もやむなしか」。丸井今井側から弁護士に接触したのは12日のことだった。
 実は丸井今井は法的整理を避けるべく昨年7月以降、債券の株式化(DES)などでの金融支援を求め金融機関と極秘交渉を進めていた。だが実施すれば99年、05年に続き3度目の私的整理。 金融不安のなか融資姿勢を厳格化する金融機関は二の足を踏んだ。一方で上期に営業赤字を計上し、本業でキャッシュを生み出せない丸井今井にも当事者能力は既になく、万策尽きた。
コミットメントライン上限まで貼りついた自転車操業だったということのようだ。確かに年末商戦が不振だった、というのはわかるが、百貨店の支払サイトが2ヶ月、ということはないんじゃないだろうか、と素人考えでは思ってしまう。そんな状態じゃDESなんて受けないよな、というか結局伊勢丹グループになることは織り込み済みだったということだろう。
一瞬産業再生機構(IRCJ)があったら・・・とも思ったのだが、実態的には同じことだろうな。
確かに町の中心に百貨店がある風景はいいもんだ。とりあえず付近に住んでいる高齢者の方々は総じて百貨店が、特に地元百貨店が好きだというのは確かだと思う。しかし結局ひとつの装置に過ぎないわけで、どれだけお客さんがきて健全に商売としてやっていけてるんだろうか?と考えると、今の街のつくりではほとんどないだろうなあ、とも思うのだ。本当に町の中心に百貨店があるような街がいいのならば、それだけ消費を街中に集中させないと実際には持たないんだろうなあ、とも思うのだ。