赤羽台団地、再び

という訳で目が覚めるといい天気、釈然としないながらも出かける中の人を送りに赤羽駅まで.通りかかった赤羽台団地は以前よりも建て替えが少し進んでいました.という訳で、変わり行く赤羽台団地をお送りいたします.


団地サイトの大御所、団地百景さんをして「これだけ凝った案内板は日本でもここだけでしょうかね」と言わしめた手書きの案内板が今日も迎えてくれました.早朝のしっとりした空気があたりを包んでいます.
現在地の右側に長く縦に書かれているのが29号棟、そこから右側が現在建替えられつつあるエリアです.


その29号棟.すっきりしない空模様とあいまってなんだか軍艦の様な圧迫感があります.廃墟みたいで陰鬱な感じですが、やたらと背の高い廊下側の腰板は他の建物と直交しているためにプライバシーを守るためだとか.29号棟の、なのか29号棟から見える建物の、かどうかは不明なのですが.


このあたりは昭和の雰囲気が色濃く残ります.一階の住人が世話をしているのか、見事な紫陽花があちらこちらに.


29号棟と路を隔てて直交する50号棟.ちょっと新しめ.一階が商店街になっています.部屋割が2.5スパンごとになっているようなんですがどういう構造なんでしょう?






29号棟を望みます.



12〜15棟群.色を塗りなおされたからなのか、比較的新しく見えますがまあ40年選手であることは変わりがなさそうです.平行配置の階段が古風です.同じようなつくりの建物が並んでいるのですが、エンドにバルコニーがあったりなかったり、焼却炉がついていたり、出っ張ってL字型になっていたり、ちょっとづつ違うんですよね.実験的な意味合いもあったのだと思われます.
しかしバルコニーつきの団地っていいなあ.




ぐるっとかわって、バス通りにそって長く伸びる52号・53号棟.最初に東京に来てバスから目撃したとき、その威圧感に驚いた病院がなにかのような長い建物です.外から見るとくの字型に折れ曲がった一棟の建物に見えますが、実際は2棟の建物が接しているだけで内部の通り抜けはできません。写真では隠れていますがちょうど2棟のつなぎ目の部分に集会所へのエントランスがあって、これがまた病院の入り口のような感じになっています.
52号棟はバス通り側に廊下が走る片廊下ですが53号棟は廊下の両側に部屋が並んでいるようです.建物の幅はほぼ一緒なので、53号棟はワンルームアパートみたいなものでしょうか.なんと、この53号棟はトイレ・風呂が共同という下宿屋のようなスタイルです。単身者用だったんでしょうね。当時は会社の寮のように、都心に働く若いサラリーマンが大量に住んでいたりしたのかも知れません。



ちょっとお邪魔してみました。写真はありませんが、緑のリノリウムなのか塩ビなのかの廊下が薄暗く長く伸びていて、時が止まったかのような感じです。トイレも、なんだか昔の国民宿舎とか高校とかってこんなかんじだったよなあ、という木の扉、小タイル貼りの床。当時は最新の設備だったのでしょうが、時の流れの中にひっそりと取り残されていました。
 エレベーターはもちろん付いています。操作盤は乳白色の釦が淡く光る懐かしいタイプ。いろんなところで玉切れしているのが残念ですが、がっこん、と大きな音をたてながら今日も上下に動いていました。 





閉鎖区画の脇の一灯式の点滅信号.公道に一灯式が正式に定められたのって確か1985年以降だったような気がしますが、そのずっと前からあるのは明らかな小さな小さな信号です.アームが短すぎたのか交差点の端に寄りすぎているのはご愛嬌.





ずっと長く伸びる白い壁沿いに歩いていると、中が見える一角にたどり着きました.中を覗くと文化財の発掘調査中の様です.こうしてみると団地も文化財のように見えてきますが.






さて、赤羽台団地に隣接して大きな団地が聳え立っています.道一本隔ててあるこの団地には表示板等がないのですが公務員団地群のようです.

圧迫感のあるつくりですが、立地状況から考えるといたしかたのないところなんでしょう.その横に新しく建て変わった赤羽台団地が迫ります.まだ新築間もないからでしょうか、なんだか周囲から白く浮いている感じです.せっかく作った歩道の一部が囲われているのですが、これもまたなんだか落ち着かない、というか仮の感じだなあ、とかそんな感じです.





またぐるっと正面に回ってきました.都営団地との間、団地のシンボルの給水塔も囲いの中に入ってしまいました.ここも解体を待つ団地が並んでいます.しばらくするとここも大きな立体駐車場を備えた高層団地に生まれ変わるんでしょう.東京駅でさえ高層ビルに囲われる今日、確かに赤羽駅から徒歩でいける範囲に数階建ての中層住宅が並ぶ姿はこの上なく贅沢とも言える風景で、それよりも少しでも広く快適な住居を提供しつつ新たな住民を呼んで団地の活性化を図ることのできる建替えと高層化というのはしごく合理的な選択に違いありません.ただ、この広いスカイラインと緑の風景はこの上なく贅沢なもので、そこにたつ団地群は緑に溶け込むように控えめで、その姿を記憶にとどめておこうと思うのでした.