高島平団地

昼過ぎに、所要で自転車に乗って高島平に向かう.相変わらず冷たい雨が降っていて、外はぼんやりと暗くて物悲しい.
高島平の団地群はこういう日に見るといっそう寒々しく、湿ったコンクリートのじっとりとした質感に包まれるようだ.どの建物も廊下は暗く、雨の音だけが響く.驟雨.
高島平は1968年に都営三田線の志村駅(現高島平駅)が開業、1972年から公団によって入居の始まった歴史ある団地だ.高層アパート群の先駆けでもあるのだが、それゆえにその後に開発された光ヶ丘なんかと比べ、明らかに団地間の空間が狭い.ちょうど昔の社宅のような幅で、十数階建のアパートが延々と続いている.緑もあるのだが、その木も30年の時を経てどれもこれも大木になってしまい、その陰が暗く続いている独特な景観を醸し出す.土曜の午後、子供の声もなくひっそりとしている.

そんな団地群だが、今の団地やアパートと決定的に違うのがもう一点ある.団地内にスーパーマーケット、コンビニの類が殆ど無い.団地の入り口、高島平の駅に一番近い団地の1階に東武ストアがあるほかには特に無い(と思う).駅の反対側には、つるかめ他のスーパーがあったりするのだが.
そしてそのかわり、団地の一階のそこかしこが商店街になっているのだった.そうか、まだ日本にスーパーマーケットが根付く前の風景がそのまま残っている訳ね.電気屋、八百屋、肉屋、乾物屋…ちゃんと小さな間口の店が次々と続いている.そして、やたら客がいる.
一番正面に当たるところに「中央商店街」という商店街とは名ばかりの道があるんだが、そこの小さな八百屋だかスーパーだか分からない店、店名すら覚えてないんだが白菜50円とかやったら安く、思わずまとめ買い.どうもお客のおばちゃんのあいだでも「此処は安いから」とわざわざ団地の外からも来てる様子だ.隣には肉屋…昔ながらの肉屋…・やっぱり安い.で肉屋だから品質もまあ信用できる.

おそるべし、高島平.
ていうか、自然に特徴のある商店街が形成されてる、つうことなんだろうなあ.
そう思いながらとりあえずまた野菜を背負って自転車で帰るのだった.