ブランド化、と出荷の自由

ちょっと前に見たのがこのニュース。日田から九重方面に走っていくと、インターを出たらすぐに木の花ガルデン、バイパスで筑後川を渡ったら日田天領水の里、さらに山に分け入っていくと木の花ガルデン本店と立て続けに現れる。木の花ガルデンはいつも混雑しているようだが、そういえばこんなニュースがあったっけ、と思い出した。


大分県日田市の大分大山町農協が、直営する農産物直売所の出荷登録者に対し、同市内に新設された別の民間業者の販売施設に出荷しないように圧力をかけた疑いが強まったとして、公正取引委員会は28日、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで同農協など数カ所を立ち入り検査した。(後略)
大山町、というと「梅栗植えてハワイに行こう」こと一村一品運動の元祖となる「NPC運動」を始めたことで有名な町だ。

運動の原点となったのが旧・大山町(現・日田市大山町)が1961年から行っていたNPC運動(New Plum and Chestnut運動)である。稲作に適しない山間地帯であることを逆に生かし、「梅栗植えてハワイに行こう」というキャッチフレーズの下、収益率が高く農作業が比較的楽な農作物を生産、果物を出荷するほか、付加価値が高い梅干しなどに加工して出荷を行う運動であり、これが成功したことを平松知事が着眼し、大分全体に広がる形になっている。
一村一品運動は今も受け継がれ、形を変えながら地域農業をブランド化してゆく戦略として受け継がれているのは周知の通り、そんな大山町が揺れているらしい。車で走っている限りだとどこまでも山が続いている限りなんだけれども。

日田市の大分大山町農協(矢幡欣治組合長)が、組合員に出荷先の選択を迫り活動を不当に制限したとして、独占禁止法違反(不公正な取引方法など)の疑いで28日、公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。この問題に対し「自由な競争が阻害されている」と批判の声が上がる一方、「地域ブランドを守るためには、やむを得ないのでは」と理解を示す人もいて、周囲の反応は分かれた。
 30代の女性組合員は3月下旬、木の花ガルテン(同市大山町)から約5キロ離れた競合店の「日田天領水の里・元氣の駅」から、「農産物を出荷してほしい」と依頼された。しかし、4月上旬、同農協職員に「どちらか一つに決めてほしい」と迫られ、「元氣の駅」への出荷は断念した。女性は「農協には父の代から世話になっているが、収入を増やすために元氣の駅にも出したかった」と明かす。
 同農協木の花ガルテン部会長の江藤剛第1理事は「他店に出荷されては困る。(元氣の駅との)競合で売り上げが約25%落ちる」と危機感を募らせる。さらに「他店に出荷され、大山の産物がどこでも購入できるようになると、約20年かけて築いた大山のブランドが消えてしまう」と訴える。
(後略)
なんとか大山の農業をここまで支えてきたこの直販所の貢献というのはすごいと思う。サイトを見る限りでは、木の花ガルデンは福岡都市圏に集中して店舗を持っており(支店がある直売所、というのもすごいですな)、農家のおじさんおばさんが農産物を持ち寄って都会から来た方に買っていただく、という普通の直売所ではなく、戦略的に大山の農産品を売りさばいていこう、という形であろうことは推測がつく。でも売れるのは大山ブランドの商品のみ、組合員が木の花ガルデンに出荷しないということは即仕入が絶たれるわけだもんねえ。そりゃ圧力もかけるわけだ(事実はわからないが)。
でも、それでいいのか?という違和感が残る。「大山の産品が大山の産品としてどこでも買える」というのは生産者としても消費者としてもいいことなんじゃなかろうか。「収入を増やすために出荷したかった」ということは、元気の家の方が高くて売れたということじゃなかろうか。自然に出荷したくなる、そういう直売所である必要があったんだろうなあ、と思うのだ。