死ぬまでにしたい10のこと(ネタバレ有)

久しぶりにレイトにいった。東京の映画館はレイトがあったりなかったりして難しいが、やっぱり映画館が多いのは単純に便利だ。21:05〜、観客は10人ほど。女の子向きの映画はどうも苦手だが、好きな人が絶賛していたのと、まあ死に臨む物語ていうかやはり死に興味があるので見に行く。そういうわけで今日は一人で。昔話になるが、私は今考えても笑うくらいに暗い(ていうか華のない)子供時代を送っていたので、そのころはそれはとてもと
てもとても生き急いでいた。年をとってから迎える死と、若いうちに迎える死はもちろん違うだろうし、人生に満足して迎える死と不本意な人生で迎える死とはまた違う。この映画はそんな、すこしでも思い通りに生きたいと思うこと、そしてそれをしようとすることを淡々と書いてゆく。表面上では幸せそうでも、日常に潜む不満、構造的な不幸、忘れていた夢や希望、そんなものが死を目前にして厳然と姿を現し、その中で一人の個として生きていこうとしているアンが切なく感じるいい映画だった。
 見た後いろいろレビューをあさってみる。一番よかったレビューはこれ(→http://www.eigaseikatu.com/title/3954/)。
カナダ社会の医療に対する問題とか、アンの家庭がカナダでは最貧困層に属するらしいとか、そう考えると少しずつ話がつながってゆくね。とくにHN「おばちゃん」さんの意見に至極納得。
 ラストのタイトルロール、アンが直接かなえることができなかったたった一つの願いがかなっていくのがうれしくとも悲しい。
いろんなレビューがあるもんで、「週刊金曜日」のコラムから(http://www.kinyobi.co.jp/pages/vol480/hensyutyo)


 ごく簡単にいえば、こんなあらすじです――。失業中の夫と2人の女児をもち、夜は大学の清掃係として働く23歳の女性・アンが、余命2カ月の宣告を受ける。その重大事をだれにも打ち明けず、生きているうちにしなければならないこと、しておきたいことを一つずつ実行していく。全部で10ある「したいこと」のうち、「娘たちが気に入る新しいママを見つける」なんてのは容易に理解できますが、「夫以外の男性と付き合う」となると、いかにも今風だなあ、という感じ。それはともあれ、この宣告を機に、育児と家事と仕事だけだったアンの生活が一変するのですが、その様子をカメラは淡々と追います。見ている間中ずっと、静かな感動が身を包み、わが自堕落な日々を反省させられます。半面、あんな立派な生き方はとてもできない、おれならきっと取り乱していただろうな、などと思いをめぐらしました。
なるほど、さすが編集長。きっと仕事も忙しくて毎日きっと張りがあるのだろう。アンの生き方は「立派」でもなんでもなく、取り乱す以前の生きるため、すこしは良く生きたいという本能的欲求に他ならないだろう。ほら、「煙草と酒を好きなだけ」なんてのも10の「したいこと」の中に入っている。

http://movie.maeda-y.com/movie/00198.htm からは


幸せな専業主婦が、余命わずかと診断され、夫にも内緒にして「死ぬまでにしたい事リスト」を作るというストーリー。30〜40代くらいの女性、とくに主婦に向けたお話といっていいだろう。 主人公の主婦は、夫婦仲もいいし、理想的なしあわせ家族だと言うのに、「死ぬまでにしたい事リスト」のなかには、「夫以外の男性とセックスする」などという項目が入っている。ここいらあたりが、冒険欲求を隠し持つ、世のマジメな主婦層の心理をうまくついた設定というわけである。
だから幸せじゃないんだって。
邦題の「死ぬまでにしたい10のこと」というのもいいけど、原題の"My life without me"もいい。ほんの小さく生きていた人の本の小さな願いをかなえて、そして毎日は過ぎてゆく。何も変わらなかったかのように。そんなことを考えながら夜中の東上線に揺られて帰る。
そういや、この映画の字幕も手書き文字だった。えらくかっちりした、四角い字を書く人だった。そういうこせいもでるんだなあ、と。